「……今回の試験の結果は、言うまでもありません。――合格者は、しんのすけさんです!!」

「……オラが?」

「しんのすけさん!!やりましたね!!さすが、私が見込んだだけありますわ!!」

「……う、うん!よくわからないけど、やったよあいちゃん!」

あいちゃんは本当に嬉しそうにしていた。

それを見ていたら、オラもようやく試験を合格した実感がわいてきた。
もうダメかと思ったけど、諦めないで良かった!!
本当に!!

そして試験官は、締めの言葉を告げる。

「――これにて、“あいお嬢様ボディーガード選抜試験”を、終了します!!」

………何か、言った。

「…………え?今なんて?」

すると、あいちゃんはさも当然のように言う。

「ですから、私のボディーガードを募集する試験ですよ。
――しんのすけさん、今日からあなたは、私のボディーガードですわ」

あいちゃんは、嬉しそうに微笑みかけてきた。
……でも、それどころじゃない……

「聞いてないよおおおおおおおおおおお……!!!」

オラの叫びは、建物の壁に反響し、大きく響き渡っていた……




182 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)00:40:43 ID:ONXk1KIta
「……お兄ちゃん、どうしたの?」

「……いや、別に……」

疲れ果てて、オラは家でぐったりしていた。
ボディーガードという名目でなってはいるが、

ほとんど秘書のような存在だった。
あいちゃんのスケジュールを調整し、送迎をする。

何か希望があれば、可能な限りそれに応える。
これまで、黒磯さんが一人でしていたことだ。

黒磯さんは感激していた。
何でも、ようやくあいちゃんも認める後継者が出来たとか。
黒磯さんに、仕事のいろはを叩きこまれる毎日だった。

(あの人、これをあいちゃんが小さい頃からやってたんだよな……タフなはずだ……)

いずれにしても、給料面はかなり上がった。以前勤めていた会社よりも、ずっと。
だがその分体力を消費するのは否めない。工場よりも、ずっと。

……その時、ひまわりが小さく呟いてきた。

「――お兄ちゃんさ……なんか、私に隠してない?」

「……え?」

ひまわりの方を振り向いた。彼女は、とても辛そうな顔をしていた。

「……隠すって……」

「……私さ、今日、お兄ちゃんの会社に行ったんだよね。

久々に、一緒に帰ろうって思って……」

「―――ッ!」

「上司の人に聞いたよ。――お兄ちゃんが、会社を辞めたこと……」

「そ、それは……」

ついに……気付かれてしまった。いずれ言おうと思っていたことだった。

だが結果として、秘密にしていたとも言えるだろう。

ひまわりは、とても悲しそうに目を伏せていた。




183 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)00:44:23 ID:ONXk1KIta
「……だから言ったじゃん。お兄ちゃん、すぐなんでも背負っちゃうって……。何で私に何も言ってくれないの?
――そんなに、私が信じられない?」

「い、いや……そうじゃなくて……」

「――だったら何!?黙ってれば私のためになると思った!?

お兄ちゃんはいつもそう!私に気を使って!!私に黙って!!」

「……」

「……いつも勝手に決めて、何も話してくれない……

お兄ちゃんは、私の気持ち考えたことあるの!?」

……ひまわりの叫び声に、室内は静まり返った。
オラは、何も言えなかった。反論すら、出来なかった。

「……もういいよ……!!」

そう言い捨てると、ひまわりは2階の自分の部屋に駆けあがって行った。
オラは、その姿を見ることしか出来なかった。

「……ひまわり……」

187 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)00:52:48 ID:ONXk1KIta
「――しんのすけくん、どうかしましたか?」

車を運転してい黒磯さんは、ふいに話しかけて来た。

「え?」

「顔が、落ち込んでいますよ?」

「は、はあ……」

この人は、たぶん人をよく見てるんだと思う。

長年この仕事をして培われた、洞察力みたいな。
この人の前だと、隠し事なんて出来ないな――
そう、思った。

「……ちょっと、妹とケンカしまして……」

「妹……ひまわりさんのことですか?」

「はい。隠し事が、ばれちゃったんですよ。

心配かけないように黙ってたんですが、逆に心配かけちゃったみたいで……」

「……仕事の、ことですか?」

「……はい」

「………」

黒磯さんは、何かを考えていた。そして、急にハンドルを切る。
それは、本来向かうべき方向とは、違う方向だった。

「……少し、休憩しましょう。この先に、海が見える見晴らしのいい波止場があります。コーヒーくらい、奢りますよ」

「はあ……」

188 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)01:05:52 ID:ONXk1KIta
波止場に着いたオラと黒磯さんは車を停め、海を眺める。
手にはコーヒー。
黒磯さんは、タバコを吸い始めた。

「……お嬢様には黙っててくださいね。タバコ、嫌いなんですよ」

「……分かりました」

オラと黒磯さんは、海を眺める。
遠くに見える雲はとても大きく、海鳥の声が耳に響き渡る。潮の香りは、どこか心地いい。

海を眺めながら、黒磯さんは話してきた。

「……私も、妻とケンカしたら、よくここに来るんですよ」

「……上尾先生――ああ、今は、黒磯先生でしたね。奥さんとですか?」

「はい。彼女、メガネを外すと気性が荒いでしょ?だから、しょっちゅう……」

黒磯さんは、照れ臭そうに話す。
黒磯さんと上尾先生は、結婚していた。もう、十数年前の話だ。
確かに、上尾先生はメガネを外すと強気になる。

それでも、黒磯さんとは幸せに生活してるようだ。

今の黒磯さんの表情が、それを物語る。

「……一緒に暮らしていれば、ケンカの一つや二つくらい、いつでもあります。

相手に分かって欲しい。自分の気持ちを、言葉を、相手に伝えたい。
そんな想いが、ぶつかり合うのがケンカですから」

「………」

「ひまわりさんだって、そうじゃありませんか?

もちろん、しんのすけくんも。そういう時は、とことん話し合うべきです。
ケンカはしないに越したことはありません。

……ですが、たまのケンカは、時にいい方向に転ぶこともあります。
――雨降って地固まる、ですよ」

「………」

すると黒磯さんは、タバコの煙を吐いた後、コーヒーを一口飲んだ。

「……今日は、家に帰ってあげてください。お嬢様には、私から説明しておきます」

「え?でも……」

「ひまわりさんに、よろしく言っておいてください」

黒磯さんは、そう言って笑っていた。サングラスの奥には、優しい眼差しが見えた。
オラは頭を下げて、その日は、家に帰った。

189 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)01:08:03 ID:NjSEg7hP5
イケメンすぎて惚れそう




192 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)01:18:26 ID:ONXk1KIta
オラは家に帰って、食事の準備をした。
このところ忙しくて、手抜き料理ばかりを作っていた。
だから今日は、ここぞとばかりにひまわりの大好物を用意する。

今日は、とことんひまわりと話す……そう、決めていた。

考えてみれば、オラは、いつまでもひまわりを子供扱いし過ぎていた気がする。
彼女も、もう大人なんだ。
きちんと向き合って、とことん話してみようと思う。

食卓を、二人で囲んで。

「―――遅いな……」

……だが、ひまわりはなかなか帰ってこなかった。

チラチラと時計を見るが、いっこうに戻らない。
電話にかけても通じない。彼女から、返信があることもなかった。

(いったい何してるんだよ……もしかして、事故か何かに……)

なんの音沙汰もない時間が、不安を駆り立てる。
しかし、どれだけ待っても、彼女が帰ることはなかった。

――そして、ひまわりが帰らないまま、朝を迎えた。

193 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)01:19:55 ID:gBEB9LjQF
おい、まさか

194 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)01:22:16 ID:mtJCCHBTD
>> 193
やめれ

やめれ

199 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)02:30:23 ID:fXBJcGoEV
風間だったらおれは許さない…!!

200 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)03:32:30 ID:FjRoNaNkm
うわぁぁぁぁすっげぇ気になるわぁぁぁ

213 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)12:17:57 ID:YP08PXyyO
「……もう朝か……」

朝日が射し込む窓を見て、オラはふと呟く。
本当に、何があったのだろうか……

嫌な記憶が、脳裏に過る。
あの時、真夜中に電話が鳴り響き、変わり果てた父ちゃん達を迎えに行った。
しかし何か起こってるなら、電話があっててもいいはず……

「……帰ったら、こりゃ説教だな」

そう……きっと帰ってくる。
そしてひまわりは言うんだ。
「友達の家にいた」って……

――その時、家の電話が鳴り響いた。

「――ッ!」

一気に、心拍数が上昇したのが分かった。
ヨロヨロと立ち上がり、電話機に向かう。

目と鼻の先にあるはずの電話機が、とても遠く感じた。
伸ばす腕が震える。
そして、受話器を耳に当てた……

鬼の目にも涙、か……

コチラからご覧ください↓




①【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

②【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

③【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

④【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

⑥【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

⑦【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

⑧【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

⑨【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

⑩【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

11【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

最終回12【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。