「……もしもし、野原です……」

「あ!野原さんですか!?」

「は、はい……あの……」

「野原ひまわりさんという方は、ご家族におられますか?」

「はい。僕の妹ですが……」

「ああ、良かった!――課長!ご家族の方に連絡取れました!」

電話の向こうの相手は、誰かに報告していた。とてもガヤガヤしている。
……その様子は、以前経験したことがあった。

「あ、あの……」

「ああ、失礼。私、◯◯警察署の者ですが――」

「――」

目の前が、真っ白になった。
足の力は抜け、その場に崩れるように座り込んだ。

「大丈夫ですか!?」

「――え?あ、はい……それで、ひまわりは……」

「実は、ひまわりさんが事故に遭いまして……」

「……そ、それで、無事なんでしょうか――」

「……はい。命に別状はありません」

「そ、そうですか……」

身体中の緊張が、一気に解けた気がした。
だが警察官は、言いにくそうに続けた。

「――命に別状はありませんが……ただ――」

「……え?」

「―――」

「―――」

……それ以降の会話は、よく覚えていない。




215 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)12:24:49 ID:fXBJcGoEV
ひま……どうなったんや

217 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)12:45:07 ID:YP08PXyyO
「――いやぁ!参っちゃった!」

「まったく……ケータイ忘れてた時に車に跳ねられるなんて……おかげで、警察官もお前が誰なのか分からなくて苦労したみたいだぞ?会社だって閉まってるし……」

「いやぁ、面目ない……」

「まあ、命が無事だっただけマシだよ」

「うん。そうだね」

ひまわりは、帰る途中に事故に遭ってた。
普段あまりものを持ち歩かない性分が災いし、確認に時間がかかってたとか。
とにかく、命が無事なら、今はそれでいい。

――ただ……

218 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)12:45:55 ID:YP08PXyyO
「……足は、どうだ?」

「……うん。感覚、ないんだ。たぶん、もう歩けないって……」

「そう、か……」

ひまわりは、歩けなくなっていた。
腰を、強く打ったらしい。

外見上では、彼女は悲観してはいないようだ。
母ちゃん譲りの明るさのおかげだろうか。

それでも、心の内は分からない。

「……あ、そろそろ検診の時間だよ」

「……分かった。後でまた来るよ」

「うん。……お兄ちゃん、ごめんね」

「なんでお前が謝るんだよ。生きてるだけで、本当に良かったよ」

「うん……」

そして、オラは病室を出る。
その直後、病室から、こもった声が聞こえてきた。

「……ひぐっ……ひぐっ……」

「………」

その声に、心は激しく痛む。
でもこれからは、オラがもっと支えないといけない。

そう決心し、ひまわりの声が漏れる病室を後にした。

image

223 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)13:11:16 ID:YP08PXyyO
ひまわりは、しばらく入院することになった。
その間、オラは家の整理をすることにした。
あいちゃんに、事情を説明ししばらく休みを取ることを告げた。
快く了承してくれたことに、本当に感謝してる。

おそらく、これから車椅子が主体となる。
ほんの少しの段差が、彼女にとって大きな障害だろう。

段差という段差に、片っ端からスロープをつける。
問題は、台所と洗面所、浴室だろう。

こればかりは、改築しないと無理だろう。
困り果てていた、その時――

「――ごめんください」

突然、誰かが訪ねてきた。

「はーい……って、あいちゃん?」

「ごきげんよう、しんのすけさん」

そこには、あいちゃんがいた。

「どうしたの、こんなところに……」

するとあいちゃんは、ニコリと笑みを浮かべた。

225 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)14:03:55 ID:YP08PXyyO
「しんのすけさん、実は、お話があるのですが……」

「話?」

「はい。我が酢乙女グループでは、介護用品にも力を入れています。

その新商品が出来たので、テスト運用をしてもらいたいのです」

「テスト運用?」

「はい。――黒磯」パチン

あいちゃんが指を鳴らすと、家の中に、一台の車椅子が運び込まれた。

「これは……車椅子?」

「はい。ですが、ただの車椅子ではありません。
……百聞は一見にしかず。――黒磯」

「はい……」

彼女の号令に、黒磯さんが車椅子に座る。

「まず、これは内部バッテリーを付けており、

軽く車輪を回すだけで、スムーズに移動することが可能なんです」

「へぇ……電動自転車みたいなものか……」

「そして、最大の特徴が……」パチン

再び彼女は指を鳴らす。
すると、黒磯さんが座っている座席が、上に延び始めた。

「これは……」

「座席は、最大1mまで延びることが可能で、床下20?まで下げることもできます。

これなら、車椅子の上り下りも容易く、少々の高いところの作業も出来る、

新型車椅子なのです」

「凄い……でも、なんだか悪いよ」

「それには及びません。先ほども言ったとおり、これはテスト運用です。

月に一度レポートを提出してもらいます。
こちらも、貴重な資料にさせてもらいます」

「……分かった。ありがとう、あいちゃん」

「礼には及びません。

……しんのすけさん、私に出来ることがあれば、何でも言ってくださいね」

そして、あいちゃんは帰っていった。
こうして、ひまわりを迎える準備は、着々と整いつつあった。

226 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)14:06:05 ID:mxaBK9lIU
これは出来る妻ですわ




234 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)18:08:16 ID:YP08PXyyO
それから、ひまわりの退院の日を迎えた。

「うわぁ……!」

ひまわりは、家の変わりように声を上げる。

家の中は、すっかり変わっていた。
タンスは全て一回り低いものに変え、

大概のものが車椅子のままでも手の届く位置に置いた。
まるでリフォームでもしたかのような室内は、

久しく家に戻らなかった彼女にとって、新鮮なものだろう。

「これなら、だいぶん過ごしやすくなると思うから」

「……うん。ありがとう」

言葉とは裏腹に、ひまわりからは、さっきまでの元気はなくなっていた。
顔も、どこか辛そうにしている。

「……どうした?」

「……ごめんね、お兄ちゃん。私のせいで、お兄ちゃんに迷惑をかけて……」

「……」

ひまわりは、完全に俯いてしまった。
それは、彼女の心からの言葉なのだろう。

――だからこそ、オラは彼女にデコピンをする。

「ていっ」

「あいたっ!」

ひまわりは、おでこを押さえたまま、目を丸くしてオラを見ていた。

237 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)18:36:14 ID:YP08PXyyO
「なに妙な遠慮してんだよ。オラとお前は他人か?」

「……」

「違うだろ。家族だろ。

お前の、しょうもない遠慮なんて、オラには通じないからな。
お前が歩けないなら、オラが後ろを押してやる。

オラは、お兄ちゃんだからな。
――だからお前も、妙な気を使うなよ」

「……うん……うん……!」

ひまわりは、涙を堪えながらずっと頷いていた。

……そうだ。オラは、ひまわりのお兄ちゃんなんだ。
オラが、ひまわりを支えるんだ。

改めて、そう決意した。

241 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)19:09:57 ID:cQ4QaXl3a
>お前が歩けないなら、オラが後ろを押してやる

かっこよすぎ

243 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)20:29:27 ID:IqyxiLNTE
漢しんのすけ

244 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)21:18:01 ID:YP08PXyyO

それからの生活は、色々大変だった。

まず、着替えることから大変だったようだ。
そしてトイレも、風呂も、今まで簡単にしていたことさえ、

大きな労力を使うものになった。
足が使えないのは、これほどまでに自由が効かなくなるものかと驚く毎日だった。
かといって手伝おうとすれば、

エッチだのスケベだの言われて追い返されることもしばしば。
しかしまあ、ひまわりは持ち前のガッツを武器に、少しずつその生活に慣れていった。

最近では、二人でよく買い物に行っている。
オラが車椅子を押して、そしてひまわりは笑うんだ。

皮肉な話かもしれない。
ひまわりが事故に遭う以前より、家族の時間が増え、会話も増えた。
もちろん、これで良かったなんてのは口が裂けても言わないし、思いもしない。

これから先、ひまわりは、一生背負うことになるのだから。

――でも、重荷を無くすことは難しいけど、減らすことは出来る。
オラが、減らしてやるんだ。
そして、ひまわりが、その名前のように、

いつまでも輝ける太陽であり続けるように、支えていく。

それが、家族ってものだろう。
……そうだよね?父ちゃん、母ちゃん……

――そんな、矢先のことだった。




248 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)21:31:03 ID:YP08PXyyO
「――それにしても珍しいね。風間くんがオラと飲みたいなんて……」

「まあ……たまには、な……」

街角の居酒屋で、オラと風間くんは酒を交わしていた。
その居酒屋では、仕事帰りのサラリーマンが、

その日の疲れを癒すかのように顔を赤くして騒いでいた。
うるさくはあったけど、どこか幸せそうなその喧騒は、

不思議と耳に入っても不快感はない。
そんな店の片隅に、オラと風間くんは座っていた。

今日飲みに誘ったのは他でもない。風間くんだった。
しかし彼は、どこか様子がおかしい。
何か、言いたいことでもあるようだ。

しばらくして、風間くんは意を決して言ってきた。

「……しんのすけ。お前に、話さなきゃならないことがあるんだ」

「……どうしたの?改まって……」

風間くんは、もう一度言葉を飲む。
そして、切り出した。

「……実は、あの日ひまちゃんが帰った時、仕事帰りじゃなかったんだ。
――僕と、会った後なんだよ……」

「……どういうこと?」

「それは……つまり……」

風間くんは、もう一度、息を吸い込む。
……それから先は、聞きたくなかった。

「――僕とひまちゃん、付き合ってるんだ」

「……」

店内が、静まり返った気がした。
他の言葉は、音は、何も耳に入らなかった。

249 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)21:33:56 ID:DfpasLzjz
ぼーちゃんかと思ったら風間くんと出来てたのかー

250 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)21:36:54 ID:HT9IkVD5t
マジかよ

252 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)21:44:56 ID:gI5zhOZj9
「……!」

感情が、昂り始めたのが分かった。
たまらずオラは、乱雑にテーブルの上にお金を置き、店を飛び出した。

「し、しんのすけ!」

風間くんの声が聞こえた。
でもオラは、何も聞きたくなかった。

夜の町のなかを、早足で歩く。一歩でも遠くに行きたかった。

ひまわりは、風間くんと会っていた。
そしてその帰り道、事故に遭った。
――たった一人で、帰る途中に……

「――おい!しんのすけ!」

街中から少し外れた公園で、風間くんはオラに追い付いた。
後ろから、風間くんの息が切れる音が聞こえる。ずっと走ってきたのだろう。
でも今は、顔を見たくなかった。

風間くんは、オラの背中に向けて話しかけてきた。

256 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)21:56:07 ID:gI5zhOZj9
「……しんのすけ、黙っていたのは悪かったと思う。いつか言おうと思っていたんだ」

「……」

「でも僕は、真剣なんだ!真剣に、ひまちゃんを幸せにしたいんだ!だから――」

「――だから……なんなのさ……!」

「――!」

思わずオラは、風間くんに詰め寄る。そして気が付けば、彼の胸ぐらを掴んでいた。

「……オラが言いたいのは、そんなことじゃない!」

「――ッ!!」

image

「どうしてひまわりを、一人で帰らせたんだよ!

どうして、最後まで見送らなかったんだよ!
その帰りに――アンタと会った帰りに、ひまわりは事故に遭ったんだぞ!?
アンタが一緒なら、違ってたかもしれない!
――一生重荷を、背負うこともなかったかもしれないだぞ!?」

「……しんのすけ……」

……分かってる。
彼に、非はない。こんなのは、ただの八つ当たりだ。
それでもオラは、オラの心は、行き場のない怒りを、彼にぶつけるしかなかった。
そうしないと、頭がどうかなりそうだった。

「……ごめん、しんのすけ……」

風間くんは、静かにそう呟いた。
そしてオラは、投げ捨てるように彼の体を解放する。
風間くんは、力なく硬いアスファルトに座り込んでいた。

「……しんのすけ……」

「――止めてくれよ!」

「……!」

「……今は、何も聞きたくない……!」

そう言い捨てたオラは、そのまま公園を立ち去る。
振り返ることなく、風間くんを振り払うように……




259 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)22:12:05 ID:gI5zhOZj9
家に帰る足取りは、とても重かった。
歩き慣れたはずの道は、とても遠く感じた。
その日は、月明かりが出ていて、道路にオラの影を作っていた。
……でも、その夜は、どこまでも深い闇色に染まっている気がした。

「……」

家には、ひまわりが待っている。
オラの帰りを、待っている。

……それが、途方もなく足を重くしていた。

「……ただいま……」

家に帰りついてしまったオラは、静かに呟く。
すると家の奥から、車椅子の音が聞こえてきた。
……そして、いつもと変わらない様子のひまわりが、玄関にやって来た。

「お兄ちゃん、おかえり」

「あ、ああ……ただいま……」

「今日ね、ご飯作ってみたんだ。車椅子で作るのって大変だったよ」

「そ、そうか……ごめん、先にお風呂入るから……」

「……?う、うん……」

不思議そうな顔をする彼女を尻目に、オラは風呂に入った。

お湯に浸かりながら、ぼんやりと風間くんの言葉を思い出す。
目の前に立ち込める湯気と同じだった。
浮かんでは消え、消えては浮かび……

壊れたレコードのように、ただ彼の言葉を繰り返していた。

268 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)22:41:46 ID:gI5zhOZj9
「……それでね、そのテレビがね……」

ひまわりは、いつもの通り明るくオラに話しかける。
でも、耳に声が届かない。聞きたいのに聞けない。
余裕がないのかもしれない。

「……お兄ちゃん?お兄ちゃん?」

「……え?」

ふと、ひまわりがオラを呼んでいることに気付いた。

「もう~。ちゃんと聞いてる?」

「あ、ああ……ごめん……」

「……」

するとひまわりは、神妙な顔でオラを見てきた。

「……お兄ちゃん、なんか変だよ?何かあった?」

「……」

少しだけ、どうするか悩んだ。
でも、ここで黙ってても、何の意味もないだろう。
風間くんは決意を固めて、オラに言ったんだから……

「……今日、風間くんと会ってたんだ……」

「……え?」

「全部、聞いたよ……」

「……」

269 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)22:42:13 ID:gI5zhOZj9

室内は、静寂に包まれる。
時計の針だけが、時を忘れないように、懸命に音を鳴らしていた。

「……そっか……聞いたんだ……」

ひまわりは、諦めたように呟く。

「……いつからなんだ?」

「……風間くんが、海外に行く前からだよ」

「ずっと連絡を取ってたのか?」

「……うん」

「そうか……オラに黙って、か……」

「それは!……ごめん」

なぜだろうか。言葉が、止まらなかった。

「……結局、オラは信用されてなかったんだな。
風間くんは幼稚園からの友達、ひまわりは妹……なのに、オラは蚊帳の外だ……」

「そ、そんなつもりじゃ……!」

「もういいよ。……今日は、寝る……」

ひまわりの言葉を遮り、オラは二階に上がる。

(……最低だな、オラは……)

二階に上がりながら、今の自分に嫌気が差していた。
自分は、こんなにも醜い人間だったみたいだ。
八つ当たりを、ひまわりにもしてしまった……

それでも、今は眠りたかった。
そしてオラは、夢に逃げた。




271 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)23:03:04 ID:gI5zhOZj9
「……しんのすけさん、元気がありませんね……」

「え?」

「顔が、憔悴しきってますよ?」

「……うん」

仕事中、あいちゃんにコーヒーを出した時、ふいに彼女が言ってきた。

「……何か、事情がおありなんですね……」

彼女の場合、黙るだけ無駄だろう。すぐに調べられる。
オラは、ことの次第を話した。心の内にある、思いも含めて。

「――なるほど。しんのすけさんも、辛かったでしょ」

「いや、オラがただ、最低なだけだよ……」

「そんなこと、ありません」

あいちゃんは、椅子を回転させ、オラの方を向く。

「人の気持ちというのは、そう簡単に割り切れるものではありません。

時には、何かを恨みたくなるときもあるでしょう。
それは、いくら心が強くても、誰にでも起こり得ることなんです。
……ですから、今のしんのすけさんを、

私は責めたりしませんし、軽蔑したりもしません。
その辛さは、あなたにしか分からないことなんです」

「……」

「……ですが、風間さんも、ひまわりさんも、

しんのすけさんにとって、かけがえのない人ではありませんか?
それは旧来からの友であり、大切な肉親であり……

どちらも、しんのすけさんという人にとって、大切な人なんじゃないんですか?」

「……うん」

「でしたら、努々忘れないで下さいね。
――二人もまた、あなたを大切に思ってることを……」

「……」

「……私が言えるのは、それだけです」

そしてあいちゃんは、仕事に戻った。
彼女の言葉は、とても響いていた。オラの心に、刻み込まれていた……

275 :名無しさん@おーぷん:2014/08/17(日)23:32:22 ID:9cSM7oTe9
あいちゃんかっけえ

316 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/18(月)23:06:47 ID:8Skoz6YKx
帰り道、オラは河原の芝生に座り込んでいた。
時刻は黄昏時。鳥たちは誰かに呼びかけるように、

鳴き声を出しながらどこかへ飛び去っていた。

ここでどうしようというわけでもない。
昨日あんなことがあって、家に帰るのが気まずいから、時間を潰しているだけだった。

(こんなに心が狭かったんだな、オラ……)

ふと、今の自分に苦笑いが零れた。

あいちゃんの言ったことは、分かってるつもりだ。
全部、オラは分かっていた。

ひまわりの事故で一番責任を感じているのは、おそらく風間くんだろう。
だからこそ、ああしてオラに全てを話してきたんだと思う。

そしてひまわり……
彼女が毎日見せる幸せそうな顔を見れば、

風間くんとの付き合いがどういうものかが、自然と分かる。
常に笑顔であった陰には、オラだけじゃなくて、

風間くんのおかげであった面も大きいのだろう。

……そんなことは分かってる。分かってるけど、

どうしても心の歪みのようなものが取れなかった。
こんなの、オラがただふてくされてるだけだろう。
ホント、子供みたいだ……

「――あれ?しんちゃん?」

「ん?」

後ろから、唐突に話しかけられた。
そこに立っていたのは、ななこお姉さんだった。

317 :名無しさん@おーぷん:2014/08/18(月)23:13:09 ID:6Ib0hfYLE
ななこおねいさあああああああああん

319 :名無しさん@おーぷん:2014/08/18(月)23:20:36 ID:O0TwVMs1S
しんのすけが30前だから、ななこお姉さんはry

320 :名無しさん@おーぷん:2014/08/18(月)23:45:59 ID:RYEZD2BLi
ななこさん

ふう・・・

322 :名無しさん@おーぷん:2014/08/18(月)23:55:18 ID:QqPHDe8iG
ななこさんきたああああああああああああ




330 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/19(火)00:10:06 ID:Z7uN05JdJ
「……そっか……そんなことが……」

オラは、ななこさんに愚痴を零すように、全部話した。
もちろん、ななこさんはひまわりが事故に遭ったことを知っていたし、お見舞いにも来ていた。
それでも、一から十までを、ななこさんに話した。
それは、オラの愚痴でもあったし、贖罪でもあった。

自分がこれだけ嫌な人間であることを、誰かに聞いてほしかった。

ななこさんは、オラの話を何も言わずに聞いてくれていた。
そして、話し終えたオラに、笑顔を向ける。

昔と変わらない、あの頃のままの笑顔を。

「……しんちゃんの気持ち、何となく分かるよ。

しんちゃんだって、本当は二人を祝福したいし、

風間くんを恨んでなんかいないんだよね?」

「……うん」

「でも、どうしても風間くんとひまわりちゃんに強く当たってしまう……。

それはね、きっと、まだしんちゃんの中で色々整理がついてないからだと思うな。
お兄ちゃんだからしっかりしなきゃいけない。

お兄ちゃんだからひまわりちゃんを支えないといけない。

たしかに、それは立派なことだと思うし、ひまわりちゃんも救われてると思う。
……だけど、しんちゃん自身はどうなのかな」

「オラ……自身……」

「しんちゃんだって、本当は辛かったでしょ?
お父さんたちのことがあって、

ひまわりちゃんのことがあって、風間くんのことがあって……

それでも、お兄ちゃんとして何とかしなきゃいけない。
それって、時に自分を追い込む結果にもなると思う」

「………」

「お兄ちゃんでもない。風間くんの友達でもない。

しんちゃんが、しんちゃんとしてどうしたいのか……

それを、一度振り返ってもいいんじゃないかな?」

「オラが、オラとして……」

するとななこさんは、少し困ったように笑みを浮かべた。

「ごめんねしんちゃん。私に出来るのはこんなことを言うくらいしかないんだ。

これについては、しんちゃん達が、自分達で解決するべきことだと思うんだ。
誰かに答えをもらうんじゃない。誰かに助けてもらうんじゃない。
しんちゃん達が、本当の意味で向き合って答えを見つけることなんだと思う」

「……」

「……あんまり力になれなくてごめんね」

「……そんなこと、ありません」

そしてオラは、立ち上がった。

「ありがとう、ななこさん。オラ、もう一度ひまわり達と話してみるよ。

それで、もう一度考えてみる」

「……うん!頑張って!しんちゃん!」

ななこさんは、とても暖かい笑顔を向けていた。
その笑顔が、オラの背中を押してくれた気がした。優しく、そっと。

331 :名無しさん@おーぷん:2014/08/19(火)00:10:21 ID:UJ6pfjEov
きっとななこさんは綺麗なおばさまになってる

356 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/19(火)01:06:16 ID:Z7uN05JdJ
それから、オラは家に帰った。

「……ただいま」

「……あ、お帰り……」

ひまわりはオラに気付くと、力なく声をかけた。
申し訳ないような、気まずいような……ひまわりは、顔を伏せていた。

これは、オラのせいなんだろうな。
オラが妙な意地を張ったせいで、ひまわりにこんな顔をさせたのかもしれない。

「……ひまわり」

「……うん?」

「今度……出かけようか……」

「……え?」

ひまわりは、驚いたように顔をオラに向けた。

「街にでも行って、買い物でもしようか」

「う、うん……それはいいけど……」

「よし。決まりだな。――それはそうと、オラ、お腹空いちゃったよ。ご飯、食べようか」

「……うん」

ひまわりは、不思議そうに首をかしげていた。

でもオラは、見極めるつもりだった。
本当に、ひまわりにとってどうするのが一番いいのか。

オラが、どうしたいのか。そして……

368 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/19(火)01:45:17 ID:Z7uN05JdJ
次の休み、オラとひまわりは街に来ていた。
車椅子を押しながら、建ち並ぶ店を眺める。
ひまわりもまたキョロキョロと辺りを見ていたが、どこか動きが硬い。
まだ、色々気になっているのかもしれない。

「……ひまわり、今日は色々見て回るからな」

「う、うん……」

……どうやら、ひまわりは動揺しているようだ。
オラが急に出かけるって言ったからだろう。

「……あ、そうだ。ちょっと寄り道していいか?」

「え?別にいいけど……」

ひまわりの許可をもらい、オラはとある場所に向かう。

そこは、街の駅前だった。
その場所に来たひまわりは、さらに首を傾げていた。

「……駅?隣町にでも行くの?」

「いや、行かないよ。ちょっと、ここで―――」

「――しんのすけ!」

後ろから、名前を呼ばれた。
振り返ると、ここに来た目的である、その人物が立っていた。

「……風間くん、待たせて悪かったね」

「え!?風間さん!?」

ひまわりは、驚いたように後ろを振り返った。

そして彼女を見た風間くんも、彼女を見たまま固まる。

「……ひま……ちゃん?」

そんな二人を他所に、オラはひまわりを押して歩き始めた。

「ほら、行くよ二人とも。今日は、三人でお出かけだ」

「―――ッ!?」

「―――ッ!!」

二人は、更に表情を固めていた。

387 :名無しさん@おーぷん:2014/08/19(火)15:25:40 ID:0VpSg2KFs
風間くんはマザコンをいつやめたんだろうな

394 :名無しさん@おーぷん:2014/08/19(火)17:00:58 ID:sXGCyO5xH
面白すぎる

399 :名無しさん@おーぷん:2014/08/19(火)20:50:07 ID:OZAc54Fk9
wktk

400 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/19(火)21:09:26 ID:d3UyLBp9k
それからオラ達は、3人で街を周っていた。
最初風間くんとひまわりは、オラに気を使いながら歩いていた。
それもそうだろう。先日あんなことがあったばかりだし。

……でも、オラはあえて普段と変わらず二人と接した。
本音を言えば、オラも気まずいことこの上なかった。

でも、オラまで気を使ってしまったら、今日ここに二人を並べた意味がない。
オラは、積極的に二人に話しかけた。

「風間くん、この服似合いそうだね」

「あ、ありがと……」

「ひまわり、あっちにアイスがあるから食べようよ」

「う、うん……」

二人は、腑に落ちないような顔をしながら、街を周る。
それでも、時間が経つにつれ、徐々に緊張は途切れていった。

そして最後には、二人は、普段の通りの笑顔を見せながら歩いていた。

401 :名無しさん@おーぷん:2014/08/19(火)21:10:38 ID:6sTBXT9DF
難しいな、人生は




402 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/19(火)21:13:40 ID:d3UyLBp9k
頃合いを見計らい、少しだけ二人と距離を置く。

「――風間くん!これ見て!」

「ああ!これ可愛いね!」

「でしょでしょ!?」

「うん!ひまちゃんに似合いそうだ!」

……二人は、とても楽しそうだった。そして、幸せそうだった。
特にひまわりは、普段家では見せないような笑顔を見せる。

家族に見せるものとは違う、全く別の笑顔……

この笑顔を作れるのは、きっと風間くんがいるからだろう。
おかげで、ようやく心が晴れた気がした。

「――ひまわり、風間くん、オラちょっと、これから仕事があるんだ」

「え?お兄ちゃん、今日は休みなんじゃ……」

「……さっき電話があったんだよ」

「じゃあ、帰ろうかしんのすけ」

「いやいいよ。オラだけ帰るから、二人で楽しんでよ」

オラは、二人の元から離れはじめた。

「ちょっと!お兄ちゃん!」

ひまわりの言葉に手だけを振って答える。
そして一度振り返り、風間くんの顔を見た。

「……風間くん。ひまわりを、頼んだよ」

「……しんのすけ……」

風間くんは、オラの目を見つめ返していた。

その目は、オラに何かを訴えていたように見えた。
そんな彼に微笑みを返した後、オラはそのまま、その場を離れていった。

帰り道に、ふと足を止め空を見上げた。そして二人の姿を想像してみる。

きっと今頃は、二人で街を歩いているだろう。

風間くんが車椅子を押して、ひまわりが笑って……
その姿は、オラの心を温かくする。でも少しだけ、寂しさも生まれていた。

「……さて!帰ってご飯の準備でもするかな!」

そんな入り混じる想いを胸に、オラはもう一度歩き出した。
今日は、ひまわりの大好物を作って、帰りを待っていようと思う。

鬼の目にも涙、か……

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①【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

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⑩【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

11【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。

最終回12【涙腺崩壊】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…今明かされた22年後の物語に涙が止まらない。※日本中が涙しました。